「スタッフの声」を採用ページに載せる——聞き方・書き方と、やってはいけないこと

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「求人にお金をかけているのに、応募が来ないんです」——先日も、ある施設長さんからそんな相談を受けました。求人サイト、ハローワーク、紹介会社。ひととおり手は打っている。それでも人が来ない。
理由はいくつもあります。ただ、意外と見落とされているのが「採用ページに、今そこで働いている人の姿がない」ことです。条件は書いてある。でも、人が見えない。
私は介護の現場に22年います。今も現場に立ちながら、介護事業者向けにHP制作やLINE構築のお手伝いをしています。その両方から見えてきたのは、求職者が最後に気にするのは条件ではなく「どんな人と働くか」だ、ということでした。
この記事では、採用ページに載せる「スタッフの声」について、次の3点を整理します。
- 何を聞けば、リアルな声になるのか
- どう書けば、話し言葉の温度が残るのか
- 盛りすぎて逆効果にならないために、やってはいけないこと
売り込みの話ではありません。今いるスタッフの言葉を、そのまま届けるだけの話です。
求職者は「一緒に働く人」を見て決める
採用の相談を受けるたび、私はまず聞きます。「求職者は、何を見て応募を決めると思いますか?」と。多くの方が「給料」「休日」「通いやすさ」と答えます。もちろん、どれも大事です。でも、それだけではありません。
条件で候補をいくつかに絞ったあと、最後に人は「ここで自分がやっていけそうか」を想像します。その想像の材料になるのが、そこで働いている人の顔と言葉です。求人票の数字では、この部分が埋まりません。
実際、求職者はHPの採用ページを驚くほど細かく見ています。どんな人がいるのか。雰囲気は硬いのか、やわらかいのか。長く働いている人はいるのか。このあたりの見られ方は、求職者はHPのここまで見ているという記事にも書きました。
介護は、人と人との仕事です。だからこそ「誰と働くか」が、応募の最後のひと押しになります。条件を並べるだけでは、その一番知りたい部分が伝わらない。そこを埋めるのが、スタッフの声だと思います。
きれいごとは逆効果——リアルさが信頼になる
「アットホームな職場です」「やりがいがあります」——こういう言葉、採用ページでよく見ます。でも、求職者はもう見飽きています。心が動きません。
なぜ響かないのか。具体がないからです。誰が、いつ、どんな場面でそう感じたのか。それが抜けた言葉は、どこの施設にも当てはまるテンプレートにしか見えません。
私の実感では、少しの弱音や大変さを正直に書いた声のほうが、むしろ信頼されます。「最初の3か月は、利用者さんの名前を覚えるだけで必死でした」——この一文があるだけで、読み手は「本当のことを言っている」と感じます。
応募が来ない理由の多くは、条件そのものより「信じてもらえていないこと」にあります。この点は求人に応募が来ない本当の理由でも詳しく触れました。整えすぎない。飾らない。リアルさは、そこから生まれます。
何を聞くか(入職理由・一日・大変なこと・やりがい・迷っている人へ)
何を聞けばいいのか。ここでつまずく方が多いので、私がいつも使っている5つの質問を挙げておきます。
- なぜこの施設に入職したのか(入職理由)
- 一日の仕事の流れ(朝から夕方まで、なるべく具体的に)
- 大変だと感じること(正直に。ここが一番読まれます)
- それでも続けている理由・やりがい
- 応募を迷っている人へ、ひとこと
この順番にも意味があります。入職理由で人柄が見え、一日の流れで仕事像がわかり、大変なことで正直さが伝わる。やりがいで前向きさが出て、最後のひとことで迷っている人の背中を押す。流れとして自然につながります。
特に3番目——「大変なこと」を省かないでください。介護福祉士として現場にいると、きれいな話だけでは求職者がかえって身構えるのがわかります。大変さを認めたうえで「それでも」と続く声のほうが、ずっと強い。
もうひとつ。「一日の仕事の流れ」は、求人票に書く内容とも重なります。声と求人票がちぐはぐだと、それだけで不信につながります。応募が集まる求人票の書き方とあわせて整えると、伝わり方がそろってきます。
聞き方のコツ(雑談から・書き起こし・話し言葉を残す)
質問を決めても、聞き方がまずいと、当たり障りのない答えしか返ってきません。声の質は、じつは「聞き方」で決まります。私が現場でやっているコツを3つ。
- いきなり本題に入らず、雑談から始める(「今日の利用者さん、どうでした?」くらいで十分)
- 録音して、あとで書き起こす(メモを取ろうとすると、話がそこで止まります)
- 話し言葉を、なるべくそのまま残す(「えーっと」は削っても、言い回しは変えない)
以前、あるスタッフに話を聞いたときのことです。書面のアンケートでは「やりがいがあります」の一行だけでした。ところが休憩中に雑談で聞くと、「認知症の利用者さんが、私の名前だけは最後まで覚えていてくれたんです」と話してくれた。この一言のほうが、百倍伝わります。
だから、書いてもらうより、話してもらう。そのほうが、その人の温度が言葉に残ります。録音した音声を文字に起こすのは、少し手間です。でも、その手間の分だけ、声は本物に近づきます。
顔写真と実名の扱い(同意を取る・匿名でもよい)
顔写真と実名があると、声の信頼度は一気に上がります。ただし、これはとてもデリケートな問題です。ここを雑に扱うと、あとで人間関係のトラブルになります。
必ず守ってほしいことを、3つ挙げます。
- 掲載前に、本人の同意をきちんと取る(口頭だけでなく、書面かメッセージで残す)
- どこに、どう載るのかを具体的に説明する(採用ページ、SNS、パンフレットなど)
- 退職したときの扱い(削除できるかどうか)も、あらかじめ決めておく
顔出しに抵抗がある人もいます。無理強いは、絶対にしない。その場合は、後ろ姿やイニシャル、イラストでも構いません。「Aさん・入職3年目」でも、中身が具体的なら十分に伝わります。
私の考えでは、顔写真の有無より、言葉の中身のほうがずっと大事です。同意のないまま載せるくらいなら、匿名で誠実に書くほうがいい。信頼は、そういう配慮の積み重ねから生まれるのだと思います。
やってはいけないこと(盛りすぎ・全員同じ回答・きれいすぎる文章)
最後に、逆効果になってしまう3つのパターンを挙げます。よかれと思ってやりがちなものばかりです。
- 盛りすぎる(実態と違う「理想の職場」を書くと、入職後のギャップで早期離職につながる)
- 全員が同じような回答(コピペに見える。一人ひとりの言葉の違いこそが価値になる)
- きれいすぎる文章(書き直しすぎると、話し言葉の温度が消えてしまう)
特に怖いのが、一つ目の「盛りすぎ」です。採用のために良く見せたい気持ちは、よくわかります。でも、実態と違えば、入った人はすぐに気づきます。そして、辞めます。採用は、入ってもらって終わりではありません。定着まで含めて採用です。
三つ目も注意が必要です。せっかくの話し言葉を、広報担当がきれいな文章に直しすぎると、生っぽさが消えてしまう。誤字は直す。でも、言い回しは残す。この線引きが大事だと思います。
不安を煽るつもりはありません。ただ、良く見せることと、正直に見せること——採用で最後に効くのは、後者だというのが私の実感です。
まとめ
スタッフの声は、採用ページで最も読まれる部分のひとつです。最後に、要点を整理しておきます。
- 求職者は条件だけでなく「誰と働くか」で決める
- きれいごとより、少しの大変さを含んだリアルな声が信頼される
- 入職理由・一日・大変なこと・やりがい・迷う人へ、の5つを聞く
- 雑談から始め、録音して、話し言葉をそのまま残す
- 顔写真・実名は必ず同意を取る。匿名でも中身が具体的なら伝わる
- 盛りすぎ・全員同じ・きれいすぎる文章は逆効果
私は介護の現場に22年立ってきました。その実感から言えるのは、採用でいちばん強いのは、飾らない現場の言葉だ、ということです。うまい文章より、本当の言葉。
特別な文章力はいりません。今いるスタッフに、ていねいに話を聞く。そのままの言葉を、そのまま載せる。それだけで、求職者にちゃんと届くページになると思います。まずは一人、話を聞くところから始めてみてください。

