介護施設の求人に応募が来ない本当の理由——給与より先に見直すべき5つのこと

この記事の目次
「ハローワークに出しても来ない」「Indeedに掲載費を払っても反応がない」「紹介会社に頼んでもなかなか決まらない」——介護施設の採用担当者や経営者から、こういう声をよく聞きます。
介護業界が慢性的な人手不足であることは事実です。ただ、同じエリア・同じ条件でも、コンスタントに応募が来ている施設と、ずっと埋まらない施設があります。
私は介護福祉士として20年以上現場で働き、今も夜勤を続けながら介護事業者のホームページ制作に携わっています。その立場から、採用がうまくいっていない施設のホームページや求人票を見てきた経験をもとに、この記事を書いています。
応募が来ない原因は、ひとつとは限りません。求人票・媒体・給与の見せ方・ホームページ・施設のイメージ——複数の要因が絡み合っていることがほとんどです。この記事では、よくある原因を5つに整理して、それぞれの対処の考え方を解説します。
「求人を出しているのに来ない」——その原因は一つではない
採用がうまくいかない施設の経営者に話を聞くと、多くの方がまず「給与を上げるべきか」「掲載費を増やすべきか」という方向で考えます。もちろんそれが有効なケースもあります。ただ、給与や掲載費を増やす前に、確認しておくべきことがあります。
求職者が応募を決めるまでの流れを、大まかに整理するとこうなります。
- 求人票を見て、条件が合いそうか確認する
- 施設名で検索して、ホームページを確認する
- 「ここで働けそうか」を判断して、応募するかどうか決める
この流れのどこかに問題があれば、応募には至りません。求人票だけを見直しても、ホームページで離脱されれば意味がない。逆に、ホームページが良くても、そもそも求人票が目に触れていなければ始まりません。
応募が来ない原因を特定するには、この流れのどこに詰まりがあるかを見ることが先決です。
原因1:求人票に「この施設で働くリアル」がない
求人票に書かれているのが給与・勤務時間・必要資格だけ、という施設は少なくありません。これらは必要な情報ですが、それだけでは「この施設を選ぶ理由」になりません。
求職者が求人票で確認したいのは、条件の他に「この職場はどんな雰囲気か」「自分が馴染めそうか」という部分です。これが伝わらないまま終わると、条件だけで他の施設と比較されて、給与が少し高い方に流れていきます。
求人票に書ける文字数は限られていますが、それでも工夫の余地はあります。
- 「夜勤は月平均○回、固定シフト制なので予定が立てやすい環境です」
- 「前職が飲食・販売など全く異なる業種からの入職者が半数以上います」
- 「入職後3ヶ月は先輩スタッフとのペア勤務で、一人立ちを焦らせない体制です」
こういった一文があるだけで、求人票の印象は変わります。「条件の説明」から「働くイメージの提示」に変えることが、求人票改善の基本的な方向性です。
原因2:媒体の選び方が合っていない
求人を出す媒体によって、集まる求職者の層が変わります。媒体と施設のニーズがずれていると、掲載費をかけても応募が来ない、あるいは採用しても早期離職につながりやすくなります。
介護職の採用でよく使われる媒体の特徴を整理します。
ハローワーク:無料で掲載でき、幅広い層にリーチできます。ただし、介護職専門の求職者だけでなく、さまざまな職種を探している方も見るため、介護に強い意欲を持った求職者に絞って届けるのは難しい面があります。
Indeed・求人ボックス等の総合求人サイト:掲載数が多く、検索流入が期待できます。ただし競合も多いため、求人票の内容で埋もれないようにする工夫が必要です。
介護専門求人サイト(カイゴジョブ・レバウェル介護等):介護職を積極的に探している求職者に届きやすいです。掲載費は高めですが、ターゲットが絞られている分、応募の質が上がりやすい傾向があります。
自社ホームページ・SNS:掲載費がかからず、施設の雰囲気を詳しく伝えられます。ただし、そもそも施設を知ってもらうための発信が必要で、短期間での効果は出にくいです。
「ハローワークだけ」「Indeedだけ」と一つの媒体に依存しているケースは見直しの余地があることが多いです。複数の媒体を組み合わせつつ、どの媒体からの応募者が定着しやすいかを記録していくことが、長期的な採用改善につながります。
原因3:給与の「見せ方」が損をしている
給与の絶対額を上げることなく、「見せ方」を変えるだけで応募数が変わることがあります。
よくあるのが、「月給○○万円〜」という幅広い表記です。下限を低く設定してしまうと、「実際にもらえるのは最低ラインに近いのでは」と思われて、印象が下がることがあります。
また、各種手当が給与に含まれていない表記も注意が必要です。夜勤手当・資格手当・処遇改善加算による上乗せ分——これらを明示することで、実際の月収が想定より高く見える場合があります。
たとえば「月給18万円〜」という表記より、「月給18万円+夜勤手当(1回あたり○○円)+処遇改善手当○万円 ※月収例:夜勤4回の場合、約○○万円」のように書く方が、求職者にとって実態がわかりやすく、応募の判断材料になります。
給与を上げる前に、今の給与を「正しく伝えられているか」を確認することが先決です。
原因4:ホームページが求人票の足を引っ張っている
求人票を見た求職者が次にすることは、施設名で検索してホームページを確認することです。このとき、ホームページの印象が応募の判断に大きく影響します。
ホームページが数年間更新されていない、写真が古い、施設の中の様子がわからない、採用ページが求人票の転記だけ——こういった状態のホームページは、せっかく求人票に興味を持った求職者を離脱させる原因になります。
逆に言えば、ホームページを整えることで、今の求人票のままでも応募数が変わる可能性があります。求人票への投資と、ホームページへの投資はセットで考えることが大切です。
ホームページが採用に与える影響については、別の記事で詳しく解説しています。
原因5:「いつも募集している施設」と思われている
これは、現場で働く人間として実感していることです。
介護職員は、地域の求人情報をよく見ています。「あそこはまたハローワークに出てる」「あそこはずっと募集してるよね」——こういう話題は、現場の休憩室での日常会話です。
そして、こういう見方をされています。
「ずっと募集している施設=入ってもすぐ辞める人が多い施設」
この印象が広がると、求人票の内容に関わらず「あそこはやめておこう」と思われる状態になります。求人票や掲載費を見直しても、この印象がある限り応募が来にくくなります。
この状態を打開するには、まず離職率そのものを下げる取り組みが必要です。と同時に、「うちはこういう職場です」という発信をホームページやSNSで積み重ねていくことが、施設のイメージを少しずつ変えていく手段になります。
逆のパターンもあります。「あそこは久しぶりに求人が出た=すぐ埋まった、つまり人気施設」という目で見られることもあります。普段から施設の様子を発信し続けることで、求人を出したタイミングで「あそこが募集してる、行ってみよう」という流れを作ることができます。
どこから手をつけるか——優先順位の考え方
5つの原因を挙げましたが、すべてを一度に改善するのは現実的ではありません。優先順位の考え方を整理します。
まず確認すること:求人票は今、求職者の目に届いているか
そもそも求人票が閲覧されていなければ、内容の改善以前の問題です。IndeedやハローワークのWeb版では、掲載後の閲覧数を確認できます。閲覧数が少ない場合は、媒体の見直しや掲載方法の改善が先決です。
次に確認すること:閲覧されているのに応募が来ない場合
閲覧数はあるのに応募が来ない場合は、求人票の内容かホームページに問題がある可能性が高いです。求人票の「働くリアル」の記載と、ホームページの状態を見直します。
並行してやること:施設のイメージの積み上げ
ホームページやSNSでの発信は、すぐに結果が出るものではありません。ただ、続けることで「あの施設はちゃんとしている」という印象が地域に広がっていきます。これは採用だけでなく、入居者の集客にも効いてきます。短期の施策と並行して、地道に続けることが大切です。
まとめ
- 応募が来ない原因は求人票だけにあるとは限らず、媒体・給与の見せ方・HP・施設イメージが複合的に絡んでいる
- 求人票は「条件の説明」から「働くイメージの提示」に変えることが基本
- 媒体は一つに依存せず、応募者の定着率もあわせて記録・検証する
- 給与は絶対額を上げる前に、手当や月収例を含めた「正しい見せ方」ができているか確認する
- 求人票を見た求職者はホームページを確認する。HPの状態が応募の判断に影響する
- 「ずっと募集している」という印象は、求人票の内容以上に応募を遠ざける。発信の積み重ねでイメージを変えていく
採用の改善は、一度やれば終わりではなく、継続的な取り組みが必要です。ただ、原因を正しく把握して優先順位をつければ、闇雲に掲載費を増やすより効率よく改善できます。
「どこから手をつければいいかわからない」という方は、ぜひ一度ご相談ください。ホームページと求人票の現状を確認した上で、具体的な改善ポイントをお伝えします。

