ケアマネが「もう来ないでほしい」と思う営業——5つのパターンと、信頼される人の振る舞い

この記事の目次
ケアマネジャーへの営業について、介護施設の経営者や現場の方から相談を受けることがよくあります。「うちの営業マンは頑張っているのに、なかなか紹介が増えない」「ケアマネと関係を作るって、結局どういうことなのか」——この記事は、その問いに対する、私なりの答えです。
私は20代の頃、訪問入浴の事業所で働いていました。そこでも、ケアマネへの営業は仕事の柱でした。当時の上司に言われたことが、今も頭に残っています。介護現場で22年働いて、ケアマネジャー資格も取り、今は介護事業のWEB集客・採用を支援する立場になった今、改めてその言葉の意味がわかる気がしています。
この記事では、私自身の経験をベースに、ケアマネへの営業で「嫌われる人」と「また来てほしいと思われる人」の違いを、現場の感覚で書いていきます。
20代の頃、訪問入浴の営業で上司に言われたこと
20代の頃、訪問入浴の仕事をしていた時のことです。営業活動も担当していて、近隣の居宅介護支援事業所を回っていました。
当時の上司に言われたのは、ひたすら「とにかく会いに行け」でした。報告のため、空き状況の連絡のため、新規サービス案内のため——理由は何でもいいから、顔を出せ、と。
当時の私は若さもあって、「そういうもんか」と思って、特に深く考えずに足を運んでいました。今振り返ると、その上司が言っていたことは、営業の本質を突いていたんだと思います。
ぶっちゃけ、報告も営業も、別に顔を合わせる必要ってないんです。FAXでも電話でも、いまならメールでもLINEでも、用件は伝わります。「効率」だけを考えれば、訪問しないほうがいい場面のほうが多いくらいです。
でも、結局は人と人の仕事です。顔がわかる関係になった人からのほうが、依頼は圧倒的に多くもらえました。これは経験則として、はっきり言えます。
なぜ「会いに行く」が効くのか——FAXや電話で済むはずの仕事
では、なぜ顔を合わせると依頼が増えるのか。理屈で説明すると、こうなります。
ケアマネが利用者に施設を紹介する時、複数の選択肢の中から「ここがいいだろう」と判断します。判断材料は、料金、立地、サービス内容、空き状況——だけではありません。「この施設の人を信頼できるか」も、無視できない判断軸です。
顔を知らない施設より、顔を知っている施設のほうが、信頼しやすいに決まっています。さらに、その人とちょっとした雑談を交わしたことがあれば、人柄のイメージまで持てます。「あの人が言うなら大丈夫だろう」と思える。
当時、私が意識していたのは、報告や用件を伝えるだけで帰らないことでした。仕事の話のあとに、少し雑談を交える。最近どうですか、と聞いてみる。子どもの話、地域の話、なんでもいい。雑談ができる関係になった人からは、明らかに紹介が増えました。
そして大事なのは、この関係性だけで紹介が来るわけではないということです。「顔を合わせて雑談できる関係」+「仕事をしっかりやって、報告もしっかりやる」——この組み合わせが、次の依頼を生みます。雑談だけでは、ただの仲良しで終わります。仕事の精度がなければ、関係は続きません。
ただし、「会いに行く」が嫌われるケアマネもいる
ここまで読んで、「じゃあ、とにかく会いに行けばいいんだな」と思った方——少し待ってください。
これは、私自身、現場でずっと感じてきたことなのですが、「会いに来られるのが嫌い」「雑談は時間の無駄」と感じているケアマネも、確実に存在します。
こういうタイプのケアマネに「とにかく会いに行く」をやると、確実に嫌われます。「忙しいんだから、用件はメールで送って」「世間話されると仕事が止まる」と内心で思われています。表向きには笑顔で対応されても、紹介はもらえません。
このタイプは、業務効率を最優先します。LINEやメールで端的に空き状況を送ってくれる施設のほうが、よっぽどありがたい。アポなしで来られたり、雑談を振られたりするのは、はっきり言って迷惑です。
つまり、「とにかく会いに行け」は万能ではありません。相手によって、まったく逆効果になります。
見分け方は、介護の仕事と同じ——「その人をどれだけ見ているか」
では、どうやって見分けるのか。
答えは、結局のところ、介護の仕事そのものと同じだと思っています。「その人をどれだけ見ているか」です。
介護の現場で、利用者一人ひとり対応が違うのは当たり前です。Aさんには冗談を言って笑ってもらえるけど、Bさんには冗談は通じない。Cさんは話しかけると喜ぶけど、Dさんは静かにしててほしい。私たちは、利用者を「見て」対応を変えています。
ケアマネへの営業もまったく同じです。会いに行くのが好きな人もいれば、メール一本のほうがいい人もいる。雑談に乗ってくれる人もいれば、用件だけにしてほしい人もいる。相手を観察して、相手に合わせる。これができる人が、結局は信頼されます。
見分け方の具体的なヒントを挙げるなら、こんなところです。
- 訪問した時の表情。歓迎されているか、迷惑そうか
- 雑談を振った時の反応。乗ってくるか、流すか
- 滞在時間に対する空気感。引き止められるか、早く帰ってほしそうか
- メールや電話の文面。短く事務的か、ちょっと砕けた言葉が混じるか
こうしたサインを読み取って、対応を変えていく。営業に「正解の型」はなく、相手ごとに正解が違う——これが、介護の仕事を続けてきた私が、営業についてたどり着いた結論です。
もう一つ上司に言われたこと——「ケアマネだけ見るな、看護師とも仲良くしろ」
20代の頃の上司に言われたことが、もう一つあります。
「ケアマネだけ見るな、訪問看護とも仲良くしろ、連携を取れ」
当時の私は、なんで看護師さん?と思いました。営業先はケアマネで完結すると思っていたからです。ケアマネが紹介を決める権限を持っているのだから、ケアマネに会いに行けばいいじゃないか、と。
でも、現場で動いてみると、上司が言っていた意味が見えてきました。
ケアマネは、看護師の言うことを意外と聞きます。
これは、ケアマネを悪く言っているわけではありません。理由があります。ケアマネは介護のプロですが、医療判断は専門外です。利用者の医療面に不安がある時、訪問看護師の意見は重要な参考情報になります。「あの施設なら看護対応がしっかりしている」「あそこは医療職との連携が取れている」——こういう情報が看護師から入ると、ケアマネはそれを参考に紹介先を選びます。
つまり、現場で起きている紹介の流れは、こんなパターンが結構あります。「訪問看護師が利用者宅で『○○さんの施設はいいですよ』と言う → 家族が興味を持つ → ケアマネに『あの施設を検討したい』と伝える → ケアマネが紹介する」。表面的にはケアマネからの紹介ですが、実質的な意思決定者は別にいる、というケースです。
このパターンに気づいてからは、営業先の見方が変わりました。さらに上流を辿ると、訪問看護師の上には主治医がいて、病院があります。在宅復帰時の退院支援室、地域医療連携室——ここからの流れも無視できません。「ケアマネだけ見ていると、紹介の意思決定構造の半分しか見ていない」ということです。
もちろん、ケアマネへの営業が最重要であることは変わりません。ただ、それと並行して、訪問看護ステーション、主治医の診療所、病院の連携室——ここにも顔を出して、仕事をきっちりこなして信頼を積み上げる。これができている施設は、紹介が「回ってくる」状態になっていきます。
20代の私は、上司に言われるがまま動いていただけでしたが、今振り返ると、「営業先を点で見るな、紹介の流れを構造で見ろ」という教えだったんだと思います。
ケアマネに嫌われる営業の5つのパターン
とはいえ、「相手によって違う」だけでは話が進まないので、相手を選ばず嫌われやすい振る舞いも整理しておきます。これは、ほぼ全タイプのケアマネに共通して嫌われるパターンです。
パターン1:相手の状況を見ずに、アポなしで突然現れる
先ほど「とにかく会いに行け」と書いたばかりですが、これは「アポなしで突撃しろ」という意味ではありません。当時の上司も、アポは取った上で会いに行け、と言っていました。
居宅のケアマネは、訪問の時間以外はずっと事務作業に追われています。アセスメント、ケアプラン作成、給付管理、サービス担当者会議の準備。時間で区切って動いている人に、アポなしの「ご挨拶だけ」が入ると、その日の仕事が確実に押します。
「短時間だから」「近くまで来たので」は、営業側の都合です。ケアマネ側の都合を見ていない訪問は、それだけで「自分本位な人」という印象を作ります。
パターン2:話が長い、要点が見えない
アポを取って訪問しても、話が長いと次から会ってもらえなくなります。「うちの施設はこんな特徴があって、こんなサービスがあって、こんな実績があって……」と、自施設の紹介を延々と続けるパターンです。
ケアマネが営業担当から知りたいのは、たいてい次の3点だけです。
- どんな利用者が向いている施設か(受け入れ条件)
- いま空きがあるか、いつ空く見込みか
- 料金の目安(最低と最高の幅)
この3点が15分以内に伝わる営業は、ケアマネから「効率がいい人」と評価されます。雑談は、この3点が伝わってから、相手の様子を見て初めて入れるものです。
パターン3:自分の施設の話しかしない
営業マンが「うちはこうです」だけを話して帰っていく。ケアマネ側からすると、「で?」となります。
ケアマネが知りたいのは、施設の情報そのものではなく、「自分が今担当している利用者の中に、この施設が合いそうな人がいるか」です。営業の話を聞きながら、頭の中で担当ケースを照らし合わせています。
良い営業マンは、最初に「先生は今、どんなケースをお持ちですか?」「困っているケースはありますか?」と聞きます。そこから自施設で受けられそうなケースを引き出して、具体的に提案する。営業ではなく、相談相手のような立ち位置を取れる人です。
パターン4:「紹介してください」を連発する
「ぜひご紹介ください」「お願いします」を連発する営業は、ケアマネに敬遠されます。後述する「公正中立」の建前があるため、お願いの連発はケアマネのプロ意識を刺激します。
「お願いします」と言わずに紹介してもらえる人と、何度お願いしても紹介が来ない人の差は、ここにあります。紹介は「お願いするもの」ではなく、「ケアマネが利用者にとってベストだと判断した結果、起きるもの」です。
パターン5:紹介した後の連絡が雑、または来ない
これが地味に効きます。ケアマネが利用者を紹介した後、施設側から連絡がない——入居が決まったのか決まらなかったのか、入居後の様子はどうなのか、何の報告もない。
ケアマネ側からすると、紹介した利用者が今どうしているかは、自分の判断が正しかったかを確認する重要な情報です。それが返ってこないと、「あの施設に紹介して、本当に良かったのか」と不安になります。不安になる施設には、二度と紹介しません。
20代の頃、私が上司から「会いに行け」と並んで言われていたのが「報告しろ」でした。紹介をもらったら、結果に関係なく必ず一報入れる。これをやり続けたから、紹介が続いた、というのが実感です。
ケアマネも「人間」——公正中立の建前と、現場のリアル
ここで、少しきれいごとを脱いだ話をします。
ケアマネジャーには、「特定の事業所に偏った紹介をしてはいけない」という公正中立の原則があります。これは制度上、絶対のルールです。建前としては、すべての施設を平等に紹介することになっています。
ただ、現場のリアルとしては、ケアマネも人間です。完全に中立で動けるかというと、どうしても無理があります。
知っている施設のほうが紹介しやすい。顔を見たことがある担当者のほうが連絡しやすい。報告をちゃんと返してくれる施設のほうが、利用者を任せやすい。ある程度は、どうしても「かたよってしまう」。これは、ケアマネ自身も自覚していると思います。
もし第三者から「かたよっていませんか?」と突っ込まれた時のために、しっかりとした紹介理由を用意しているケースも多いです。「利用者のニーズに合っていた」「立地が近かった」「家族の希望と一致した」——理屈はいくらでもつけられます。
これを批判したいわけではありません。むしろ、これが現場のリアルだからこそ、施設側の営業が意味を持つのです。
公正中立を完全に守れない人間相手だからこそ、顔を覚えてもらい、信頼を積み上げ、「この施設なら安心して任せられる」と思ってもらう価値がある。逆に、本当に全員のケアマネが完全に中立で機械的に紹介を割り振っているなら、営業活動そのものが無意味になります。
「また来てほしい」と思われる人の共通点
嫌われるパターンの裏返しでもありますが、ケアマネから「この人にはまた来てほしい」と思われる営業担当には、共通点があります。
1. 相手をよく見ている
先ほど書いた通りです。雑談を喜ぶ人には雑談を、業務効率を求める人には端的に。相手を見て、対応を変えられる人です。
2. 自施設の「合わないケース」を正直に言える
「うちはなんでも受け入れます」と言う営業は、ケアマネから信用されません。なんでも受けます、はつまり「自施設の特徴を把握していない」と同じ意味だからです。
「うちはこういうケースは向きません」「医療依存度が高い方は別の施設のほうがいいです」と正直に言える人は、ケアマネにとって「信頼できる情報源」になります。合わないケースを言える人だからこそ、合うケースを紹介された時に「この人が言うなら大丈夫」と思われます。
3. 紹介後のフィードバックを必ず返す
紹介を受けたら、入居の可否にかかわらず必ず連絡する。入居が決まらなかった場合も、「○○様、見学いただきましたが、ご家族のご希望と合わず、今回は見送りとなりました」と一報入れる。
このフィードバックが、次の紹介を生みます。ケアマネは「報告してくれる施設」を覚えています。報告がない施設は、紹介リストから静かに外れていきます。
経営者が知っておくべき、営業担当に必要な「権限」
ここまでは現場の振る舞いの話でしたが、経営者の方に一つお伝えしたい構造的な話があります。
営業担当が現場で良い動きをするには、「現場で判断できる権限」が要ります。
ケアマネから「こういうケースは受けられますか」と相談された時、その場で「受けられます」「難しいです」と返せる営業担当は信頼されます。逆に「持ち帰って確認します」が多い営業担当は、ケアマネから見て「使いにくい窓口」になります。
持ち帰って数日後に「やはり厳しいです」と連絡が来ても、その間にケアマネは別の施設に紹介を済ませています。営業担当を持ち帰り型にしているのは、多くの場合、施設側の意思決定構造の問題です。
経営者がやるべきことは、受け入れ可否の判断基準を明文化して、営業担当に判断権限を渡すことです。「医療依存度はここまで」「認知症はここまでなら可」「身寄りなしも可」など、明確なラインを引いておけば、営業担当はその場で答えられます。営業の速さは、施設全体の意思決定構造で決まります。
まとめ
- ケアマネへの営業は、最終的には「人と人」。顔を合わせた関係から、紹介は増える
- ただし、「会いに行く」が嫌われる相手もいる。万能ではない
- 見分け方は、介護の仕事と同じ——「相手をどれだけ見ているか」
- ケアマネだけ見るのは紹介構造の半分しか見ていない。訪問看護師・主治医・病院連携室まで含めて、信頼を積み上げると紹介が「回ってくる」
- 嫌われる5パターン:アポなし訪問/話が長い/自施設の話だけ/紹介依頼の連発/紹介後の連絡が雑
- ケアマネも人間、ある程度はかたよる。だからこそ営業活動が意味を持つ
- 信頼される人:相手をよく見る/合わないケースを言える/紹介後のフィードバックを返す
- 経営者は、営業担当に判断権限を渡す。持ち帰り型では関係が育たない
20代の頃に上司から言われた「とにかく会いに行け」は、今振り返ると、「相手を見て、関係を作って、仕事で応えろ」という意味だったんだと思います。営業の本質は、20年経っても変わっていません。
20代の頃に上司から言われた「とにかく会いに行け」は、今振り返ると、「相手を見て、関係を作って、仕事で応えろ」という意味だったんだと思います。営業の本質は、20年経っても変わっていません。

