【2025年完全義務化】介護事業所の重要事項説明書WEB公開、対応方法と対象範囲を整理する

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2025年4月、介護事業所の運営規程や重要事項について、書面掲示に加えてウェブサイト上での公表が完全義務化されました。
1年間の経過措置期間が2025年3月末で終了し、現在は対応していない事業所が運営基準違反として指導対象となる可能性があります。
ところが、この義務化を取り上げる記事の多くが「全ての介護事業所が対象」と書いています。これは、現場で長く働いてきた立場から見ると、少し雑な整理だと感じます。
たとえばサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)や住宅型有料老人ホーム。これらは「介護施設」と一括りに語られがちですが、義務化の対象になるかどうかは、施設の類型ではなく介護保険サービスの指定を受けているかどうかで決まります。
この記事では、
- 何がどう義務化されたのか
- サ高住・有料老人ホームの線引きはどうなるのか
- 自社で対応する場合、何から始めればいいのか
この3点を、介護現場の実務感覚を踏まえて整理します。
何が義務化されたのか
2024年度の介護報酬改定で、「書面掲示」規制の見直しが行われました。
これまで、介護事業所は運営規程の概要や勤務体制などの重要事項を、事業所内に書面で掲示することが求められていました。利用者や家族はこれを見て、料金やサービス内容を確認していたわけです。
しかし、この掲示は「事業所まで足を運ばないと見られない」という限界があります。複数の事業所を比較したい利用者・家族・ケアマネにとっては、不便です。
そこで2024年度改定では、書面掲示に加えて、インターネット上で誰でも閲覧できる状態にすることが義務付けられました。1年間の経過措置を経て、2025年4月から完全施行されています。
掲載先は次のいずれかです。
- 法人のホームページ等(自社サイト)
- 介護サービス情報公表システム(厚生労働省所管の公的システム)
つまり、自社HPがあればそこに載せる、なければ情報公表システムに載せる、という選択になります。
掲載する内容は、運営規程の概要、勤務体制、利用料金、サービス内容、苦情対応窓口など。実務上は、利用者と契約時に交わす「重要事項説明書」とほぼ同じ情報になります。
対象になる事業所・ならない事業所
ここが、他の記事ではあまり丁寧に整理されていない部分です。
義務化の対象は、介護保険法上の指定を受けた事業所です。「介護に関わる施設だから」ではなく、「介護保険の指定事業所だから」が基準になります。
施設類型別に整理すると、こうなります。
明確に対象になる事業所
- 特別養護老人ホーム(特養)
- 介護老人保健施設(老健)
- 介護医療院
- 介護付き有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護の指定あり)
- グループホーム(認知症対応型共同生活介護)
- 訪問介護、訪問看護、通所介護、通所リハビリなど、すべての居宅サービス事業所
- 居宅介護支援事業所(ケアマネ事業所)
- 福祉用具貸与・販売事業所
これらは介護保険サービスの指定を受けているため、すべて対象です。
判断が分かれる事業所
ここからが、現場でも混乱しやすい部分です。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の場合
サ高住は、それ自体は「高齢者向けの賃貸住宅」であって、介護保険サービスの指定事業所ではありません。しかし、運営形態によって扱いが変わります。
- 特定施設入居者生活介護の指定を受けているサ高住 → 対象
- 訪問介護・通所介護等の事業所を併設しているサ高住 → 併設している指定事業所が 対象
- 介護保険サービスの指定がなく、入居者が外部の介護事業所を利用するサ高住 → そのサ高住自体は 介護保険上の対象外(ただし、入居者が利用する外部の介護事業所はそれぞれ対象)
有料老人ホームの場合
- 介護付き有料老人ホーム(特定施設の指定あり) → 対象
- 住宅型有料老人ホーム(特定施設の指定なし) → ホーム自体は 対象外(併設・関連の介護事業所は対象)
対応方法は2つ。どちらを選ぶべきか
対応方法は2つしかありません。
- 介護サービス情報公表システムに掲載する
- 自社ホームページに掲載する
どちらを選んでも義務は果たせます。ただし、それぞれにメリットとデメリットがあるため、自社の状況に合わせて判断する必要があります。
介護サービス情報公表システムを使う場合
厚生労働省が運営する公的な情報公表システムです。すべての介護事業所がすでにこのシステムに登録されているため、新たにIDを取得する必要はありません。
メリット
- 無料
- 入力フォームが定型化されているため、漏れなく掲載できる
- HPを持っていなくても対応できる
デメリット
- 検索性が低く、利用者・家族・ケアマネが日常的にチェックする場所ではない
- 集客や採用への波及効果はほぼない
- 公的システムなので「最低限の対応」という印象になる
自社ホームページに掲載する場合
自社HPに「運営規程・重要事項」のページを新設して、必要情報を掲載します。
メリット
- 自社の他のページ(サービス紹介、スタッフ紹介など)と一緒に見てもらえる
- 検索流入が期待できる
- 「情報を整理して発信している事業所」という印象を持ってもらえる
- 採用や集客の文脈に組み込める
デメリット
- HPを持っていない場合、まずHPを用意する必要がある
- 掲載内容の更新を自社で管理する必要がある
- 古い情報を放置すると、かえって信頼を損ねる
うちはどっちで対応すべき?判断フロー
実務に落とすと、こんな順序で判断するのが現実的です。
Q1:自社のホームページはありますか?
- ない → 情報公表システム一択。まずはこれで義務化対応を完了させましょう。
- ある → Q2へ
Q2:そのHPは、定期的に更新できる体制がありますか?
- 更新は難しい・誰が担当か決まっていない → 情報公表システムを推奨。HPに古い情報を載せ続ける方がリスクです。
- 更新できる → Q3へ
Q3:HPを、集客や採用の入り口としても使いたいですか?
- 使う予定はない → 情報公表システムで十分です。
- 使いたい・使っている → 自社HPに掲載しましょう。義務化対応をしながら、検索流入や問い合わせ獲得の機会に変えられます。
判断のポイントは、「HPを義務化対応のためだけに使うのか、集客・採用も含めて活用するのか」です。集客・採用の道具として育てる気がないなら、無理に自社HPで対応する意味はありません。情報公表システムで十分です。
義務化対応の先にあるもの
ここまで読んで、こう感じた方もいるかもしれません。
「結局、義務化は最低限やればいい話で、たいしたことじゃないのでは?」
その通りです。義務化対応そのものは、最低限の運営基準を満たすだけの話です。
ただ、利用者・家族・ケアマネの目線で考えると、もう一段の論点があります。
複数の事業所を比較するとき、人は「最新の情報がきちんと載っている事業所」と「数年前の情報のまま放置されている事業所」のどちらを選ぶでしょうか。あるいは、情報公表システムで型通りの情報しか出していない事業所と、自社HPで運営方針や現場の様子まで伝えている事業所と、どちらに問い合わせたくなるでしょうか。
義務化は、「最低限のラインを揃える」制度です。そのラインを超えて、自社の情報をきちんと整理し、定期的に更新している事業所は、利用者・家族・ケアマネに「ちゃんとしている」と伝わります。
義務化を「行政対応」で終わらせるか、「自社を選ばれる入り口」に変えるか。同じ対応でも、考え方ひとつで結果が変わります。
まとめ
- 2025年4月、介護事業所の重要事項のWEB公開が完全義務化
- 対象は「介護保険サービスの指定を受けた事業所」。サ高住・住宅型有料老人ホーム自体は、介護保険の指定がなければ対象外
- 対応方法は「情報公表システム」か「自社HP」の2択
- HPがない、または更新できる体制がない場合は、情報公表システムが現実的
- HPを集客・採用に活用したい事業所は、自社HPでの対応がおすすめ
未対応の場合は運営基準違反として指導対象になる可能性があるため、まだ対応していない事業所は早めに準備を進めてください。
